■とあるジャズの名盤から
「好きな曲は何?」
そう尋ねられると必ずとあるアルバムの名前を答える。
『Keith Jarrett / The Köln Concert』
このアルバムの1曲目。
『Part I』 という約26分にもなる楽曲だ。
1975年1月24日、ドイツはケルンのオペラハウス。 本来手配していたものと違う小ぶりで調律のされていないピアノ。 その後、調律は行ったが、高音の濁りと低音の歪みは残ってしまう。 そして、キースの体調も万全ではない中で伝説のコンサートが深夜23時30分に幕を開ける。
ピアノソロによる完全即興演奏。 様々な雰囲気のサウンドが一曲として紡がれていく。
湧き出る感情がそのまま音楽に直結し、演奏となる。魔法のようなコンサートだ。
まさに神がかり的な演奏。コンサートから50年経ったとしている今でも、最高傑作にあげられている。
■初めて聴いたのは幼少の頃
最初に聴いたのは、父の運転する車の中。
当時はマツダのピックアップトラックだった。
遠出をした後、帰路につく時はいつもこの曲がかかっていた。 車のエンジン音にかき消され、細かい部分は聞こえていなかったが、メロディラインだけは確かに耳に届いていた。
遠出の疲れから助手席で席を倒し、フロントガラスを仰ぎ見るように座る。
夜の高速道路。オレンジ色の街灯が下から上へ流れていく。
その中で貧相なスピーカーから『Part I』が流れているのだ。
あの独特な雰囲気は今でも鮮明に記憶している。
空間ごと魔法にかかっているような焦燥感と安心感が入り混じった不思議な時間であった。
■思い出は音楽と共に…
スピーカーの音は本当に悪かったが、感情と音楽が入り交じった空間と音楽から得られた感動のすべてがマッチしていた。
この感動をさらに深く感じたい。
より良い音で聴いたらどんな発見があるのか。
それがオーディオにハマっていくきっかけであった。
今では西独盤のLPからCDだけでも4、5枚は所持している。
発売時期や国内盤、海外盤で音の違いまでもが自分を狂わすひとつの要因であった。
今日もこの曲を聴く。
あの頃とは違う、もっと良い音で。

KA-PgPg Cross/4s ¥180,000 (税別)

